仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
平成14年(ラ)第322号 動産引渡等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
(原審・横浜地方裁判所平成13年(ヨ)第783号)

決定
【住所につき略】
抗告人      ソシオ・フリエスタ
代表者理事長  数 源一郎
代理人弁護士名

【住所につき略】
相手方 株式会社横浜フリエスポーツクラブ
代表者 代表取締役 奥寺 康彦
代理人弁護士名

主文
1 本件抗告を棄却する
2 抗告費用は抗告人の負担とする

理由

第1 抗告の趣旨
1 原決定をいずれも取り消す。
2 本件をいずれも横浜地方裁判所に差し戻す。

第2 当事者の主張(要旨)
1 抗告人
(1) 原決定は,最高裁判所昭和39年10月15日第一小法廷判決(民集18巻8号1671頁)の掲げる基準をあまりに形式的に解釈しすぎている。 原決定は抗告人が団体としての組織は一応備えているが,多数決の原理及び財産の管理が行われておらず,上記判決の基準を全て満たしていないとして法人でない社団とは認められないとするが,上記判決自体が,その掲げる基準の全てを満たさなければ「法人でない社団」に該当しないなどといった判断はしておらず,しかも「その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理等団体としての主要な点が確定していること」というのは規約上確定していることで足り,設立後間もない抗告人のごとき団体がその基準に掲げられる全てを実体の面においても確定した運用が されていることまでは射程距離には含まれていない。

上記最判の事案は,団体の支部の名称を持ち,独自の規約を持たず,本部の約款を準用するという団体を「法人でない社団」と認めたものであり,その他数々の下級審裁判例で上記基準を全て満たしていなくとも「法人でない社団」であることが認められてきている。

(2) 原決定が指摘するように,たしかに,旧規約及び本件協定において,「抗告人の会員から支払われる会費は」相手方にいったん支払われ,その中の一部のみが抗告人の活動費としてあてがわれることになっていたこと,実体として会費が抗告人の開設する「ソシオ・フリエスタ事務局」名義の口座へ振り込まれ,「ソシオ・フリエスタ事務局」(エフアンドアイ)に対して会費のうち抗告人の活動費が還元されていたことは事実である。しかし,上記規約は,いずれも財産管理に関する規定ではなく,会費の徴収方法をどのような方法でするかというものにすぎず,会費の徴収方法と会費収入による財産の管理処分権限が誰にあるかということは全く関係がない。

(3) 原決定は,平成12年4月1日に臨時総会開催後は総会を開催していないこと,本件仮処分の申立てに反対の意思を表明している会員が多数存在することから,抗告人において多数決原理が行われていないとするが,抗告人は平成12年10月には郵便投票による臨時総会を開催していることや,上記のような反対の意見を表明している会員は極めて少数であり,会員名簿を抗告人に返還すべきとの意見表明をしている者にも充ちていない。

第2 当事者の主張(要旨)
2 相手方
(1) 抗告人が引用する裁判例はいずれも本件とは事実を異にするものであるし,むしろ「法人格のない社団」の当事者能力に関する従来の裁判例に照らせば,抗告人には当事者能力が認められないといえる。

(2) ソシオ・フリエスタは,相手方及び横浜FCを支援することを目的とし,これを離れて独立の存在意義も存在目的も有さない。 ソシオ・フリエスタの活動の主要部分である会員の募集,広報活動,会員へのサービス給付,会費の徴収管理,名簿の管理等は全て相手方が行っており,ソシオ・フリエスタには独自の組織的活動はない。

(3) ソシオ・フリエスタにおいて財産管理が全く行われていなかったことは,ソシオ会費が全てソシオ会員から相手方に支払われていたこと, 規約上も財産管理に関する規定がないこと,実態としても抗告人が財産を管理していた事実がないことから明白である。

(4) 抗告人は,本件仮処分の申立てを規約が求める総会決議をしないで行っており,多数の会員が反対していることなどから,抗告人には多数決の原則が行われていない。

第3 当裁判所の判断
1 前提となる事実認定は,原決定の「理由」欄の第3の2と同じであるから, これを引用する。

2 法人格を有しない団体が,民事保全手続における当事者能力を有するためには,「法人でない社団」(民事保全法7条,民事訴訟法29条)であることが必要であって,「法人でない社団」に当たるというためには,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定していなければならない(最高裁昭和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671ページ参照)。

原決定は,抗告人が団体としての組織は一応備えてはいるものの,多数決の原理及び財産の管理が行われているということはできないとして,「法人でない社団」(民事保全法7条,民事訴訟法29条)と認めるのは困難であると判断した。
 財産的側面についていえば,必ずしも固定資産ないし資本的財産を有することは不可欠の要件ではなく,そのような資産を有していなくても,団体として内部的に運営され,対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され,かつ,その収支を管理する体制が備わっているなど,他の諸事情と併せ,総合的に観察して,「法人でない社団」として当事者能力が認められる場合があると解される(最高裁平成14年6月7日第二小法廷判決・民集56巻5号899頁参照)。

本件について見ると,抗告人は,相手方が運営するサッカーチームを支援するためのシステムであるソシオ制度を導入し,会員が納入する会費によってこれを賄い,会員が自主的に管理して組織を運営するという目的のもと,平成11年5月30日には設立総会が開催され,規約(旧規約)が承認されるなど,組織としての代表の方法や総会の運営等が一応確定しており,現実に理事会,理事長等が活動していたのであるから,形式的には充足しているようである。

しかし,当初は,抗告人の入会事務,抗告人の会員名簿の作成は相手方が行い,上記設立総会開催以前である平成11年2月中旬ころからは,相手方が委託したエフアンドアイが上記会費等の事務処理を行っていたこと,相手方はエフアンドアイに対して上記委託料として会費総額の10%相当を支払っていたこと,旧規約(甲2の1)及び協定書(甲3)においても,会員からの会費は相手方に一旦支払われ,その中の一部のみが抗告人の活動費として相手方から支給されることになっているが,現実には抗告人はこれまで会員からの会費を一切受け取っていないことが認められるのであるから,実体として,抗告人はその活動の中枢になる会員からの会費を実質的に一切管理していないのであって,抗告人に対外的に活動するのに必要な収入を得て,それを管理し自主的に活動する体制が備わっているとは到底認められない。

また,上記協定書によると,相手方も抗告人を別個独立の存在として取り扱っているように見えるが,実質的には本来は抗告人が行うべき抗告人の業務委託契約は相手方が行い,会員証の発行,会員からの問い合わせへの対応,会員名簿の作成,会員への郵便物の郵送等の業務も相手方から委託を受けた業者が行うなど,実体として相手方への依存度が極めて高いといえ,本件仮処分の申立てに対しても反対の意思を表明している会員が少なからずいるのに会員総会のような最終的意思決定期間が現実に機能しているとは認められないことなどからすると,現時点で,多数決の原則が行われ,団体として内部的にも自立して運営されているとは認めがたいというほかない。

以上を総合すると,抗告人は,現時点では社会的主体と認め得るような団体としての実体を備えないものに至っているというほかなく,「法人でない社団」と認めるのは困難といえる。

3 以上によれば,抗告人には当事者能力がないから本件申立ては不適法であって却下すべきであり, これと同趣旨の原決定は相当である。
よって,本件抗告は理由がないから棄却することとし,主文のとおり決定する。

平成15年6月30日
東京高等裁判所第16民事部
【裁判長 裁判官名・裁判官名2名】

以上

2003年7月17日
第4期ソシオ・フリエスタ理事会